最近、友人が某都心に築浅の中古マンションを購入しました。その価格は1億円をわずかに下回るといいます。それ買って本当に大丈夫なの?と、さすがに少し心配しましたが奥さんも働いておりペアローンを組んだとのことでした。
一方、会社の同僚でも奥さんが専業主婦の家庭の方にお住まいを聞くと、都内の場合、私鉄の支線(東急なら東横・田園都市線ではなく、多摩川線など)か、中央線でも三鷹を越えた市部であることが多いです。前述の彼よりキャリアがあり、年収水準がより高いと思われるケースでもそうです。
理由は簡単で一人で稼ぐより二人で稼ぐほうが簡単だからです。もちろん、共働きだと家事・育児を共同で行う苦労はありますが、一人で年収を500万あげるより二人で働いて追加の500万を稼ぐほうが楽です。しかも、共働きの場合は所得税の累進課税がそれぞれにかかってくることになるので、追加の500万円に対してより多くの手取り金額を見込めます。
かくして、専業主婦を持つ先輩より共働きの後輩のほうがより都心の高価な住居を構えることとなります。
共働き家庭は30年以上にわたって増え続けている
ここで統計を紹介しましょう。内閣府の行っている男女共同参画白書を参照すると、共働き世帯数は過去30年間増え続け、もっとも最近の数値では1,129万世帯が共働きをしており、その数は専業主婦家庭の約2倍となっています(平成28年)。
女性の年齢別就業率を見ると、いずれの年代でも過去と比べて大きく上昇しており、このトレンドが続く限り、女性の就業率は今後も100%に少しずつ近づいていくと考えられます。
また、一般的により給与水準の低いとされる非正規雇用者の割合を見ると、ここ3年で15 - 44歳までの非正規雇用者の割合が減少していることが分かります。つまり、女性若年層の給与水準の上昇が起こっていると考えられます。
パワーカップルが東京の不動産相場を下支えする
日経新聞で次のような記事を見ました。デベロッパーは近年、東京首都圏の夫婦共働き「パワーカップル」をターゲットに商品開発・マーケティングを行っているそうです。
パワーカップルの条件は夫婦ともに年収700万円超。彼らの好む物件の条件は
「最寄り駅まで徒歩8分以内、(オフィス街の)東京駅や大手町駅まで乗り換えなしで15~30分」(トータルブレインの久光社長)。これが首都圏のパワーカップルが好む物件の最大公約数的条件だ。価格は二の次。
とあります。私の周囲を見渡す限り、東京ではパワーカップルの条件を満たす家庭が今後も増えていく実感があります。
2022年生産緑地問題はパワーカップルの行動に変化を与えるか
将来の不動産市況に関する論評を見ますと、2022年には「生産緑地問題」が不動産相場を大きく押し下げるという識者がいます。彼らは、練馬区・世田谷区に多くある「生産緑地」(’市街化区域内の農地)が法律の期限を迎え、多くが宅地に転用されるだろうと見ています。その結果、東京の不動産市況は値下がりに転じるという説です。
しかし、私は従前のパワーカップルの属性・指向を考慮すると東京都心(多くの企業が立地するエリア)の不動産価格に大きく影響を与える可能性は低いのではないかと見ています。たとえば、練馬区駅徒歩15分の戸建て用地を彼らは求めるでしょうか。たとえ価格は安くても彼らは都心の値上がりしたマンションを購入し続けるはずです。